英彦山(ひこさん 1199.6m=南岳)
英彦山は、深田クラブ選定の日本二百名山に列された名山である。二百名山には、百名山に惜しくも外れてしまった名山、人によっては百名山よりももっと名山と言われるような名山が名を連ねている。 英彦山は、標高も低く低山の部類だし、見目も麗しいほうではない。そうなのに何故二百名山に列せられることができたのか。
それは、歴史と宗教である。英彦山は、古くから信仰の山として栄え、日本三大修験場の山として、最盛期には八百の宿坊と三千人の衆徒で賑わったという。一時期は、我が地元の宝満山もその配下に従え、その影響は九州一円に及んだという。今でも山中には神社や遺跡が随所に見られる霊山である。
福岡県と大分県の県境をなし、内陸部にあるため一旦積雪したらかなりの間雪が残る。本日も雪を期待して、早起きして車を飛ばした。山中に入ると舗装道路には積雪があり、別所から先、野峠方面へは道路が凍結し、チェーン規制がかかっていた。
別所の大きな無料駐車場に車を停めて、自然歩道を、野営場、スキー場方面に歩こうとしたが道がわからなくなり、あたりを行ったり来たりで一時間近くも時間をロスした。案内標識がやや不親切であろうか。
自然歩道は、期待以上のかなりの積雪で、しかも時間が早いので凍り付いている。転倒しないように用心深く歩く。豊前坊の高住神社下までは、野営場、スキー場、青年の家などの側を通りながらの、雪道をほぼ一時間の平行移動だ。
高住神社の石段を登り、神殿の右手に登山口がある。これからは、北岳へ深い雪の中の急登となる。すぐに、逆鉾岩などの奇岩が目にはいるようになる。
左に望雲台への分岐があるので、立ち寄る。20メートル程の、岩と岩の間のかなり急な鎖場を懸命に登りつくと、崖の端にでる。向こうは千尋の谷底で、竦んでしまう。右へ垂直な壁に太い鎖が張ってあり、わずかな幅の足場を30m程の水平トラバース。
積雪で足場がわかりにくくなっており、緊張する。左側は垂直に切れ落ち下が見えない。今までの登山経験の中では、アルプスの大キレットや不帰の険などは、全く怖いとは思わなかったが、ここが一番怖く、遭難の恐れが高いところだと思う。落ちたら絶対に死ぬ。 トラバースした先にこれまた10m程の垂直の壁が立ちふさがり、真ん中に鎖が1本。よじ登ることとするが、万一滑り落ちようものなら途中の棚がないので、千尋の谷底に落ちてしまうこととなる。登りきるとステンレスの手すりがあり、そこでおしまい。手すり先は、百メートル以上も切れ落ちているようで、下が見えないくらいである。望雲台は怖いところだ。 長居は無用、写真を撮りすぐに引き返す。往復20分くらいで分岐に戻る。
北岳への登りは結構きつい。雪ですべるのでなおさらだ。北岳の山頂には縄が張ってある聖域があって立ち入り禁止となっている。
英彦山神宮の上宮があるのは、中岳で、北岳からはやや下って気持ちのいい縦走路をちょっとで登り返す。 中岳山頂には、売店などもあるのだが、本日は閉まっていた。山頂は広くて英彦山山頂のでっかいポールが立っている。が、英彦山の最高点は、次の南岳である。
中岳から南岳まではすぐで、南岳山頂には展望台も設置されていた。
南岳から鬼杉を目指して下る。さすがに南側なので雪は少なくなったが、岩場の急降下となり、望雲台を別にすれば、このコース中では一番の危険箇所だろう。慎重に下る。
かなり下ったところに杉の大木群が現れ、ひときわ大きいのが「鬼杉」で、樹齢推定1200年と案内標識があった。ベンチが置いてあり、ここで昼食。
鬼杉の横をちょっと下り、木の根を掴みながら尾根へ急登すると、これから玉屋神社を経て、英彦山神社奉幣殿にいたる。
下山路であるが、鬼杉まで相当下ったので、奉幣殿まではほとんどが登りであり、かなりくたびれる。
奉幣殿からは、長い参道の石段を下り、右へ車道をたどれば別所の駐車場である。
本日は、登り始めるときに出会った白い犬が、ずっと一緒についてきて結局コース全部に付き合ってくれた。なんだか山の神の化身みたいな感じでさすがは霊山だなと思った。
(6:00)家を出る、
(7:10)別所駐車場、道がわからず1時間弱ロス、
(7:50)自然歩道へ、 (8:45)豊前坊、高住神社下、
(9:00)望雲台分岐、 (9:08)望雲台、 (9:16)分岐へ戻る、
(9:52)北岳山頂、 (10:13)中岳山頂、7分休憩、 (10:28)南岳山頂、
(11:10)鬼杉、昼食(11:33)鬼杉発、 (12:05)玉屋神社、
(12:30)奉幣殿、(12:59)別所駐車場に戻る
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