2008年2月9日土曜日

女彫刻家


女彫刻家(ミネット・ウォルターズ著 成川裕子訳)創元推理文庫
 この小説は、アメリカ探偵作家クラブ最優秀長編賞受賞作品であり、1995年度の「このミステリーがすごい」と週刊文春「傑作ミステリー・ベスト10」との両方の第一位にランクされたミステリーである。

 やっと今になって読んだ。

 母と妹を惨殺した猟奇事件を本にしようと、作家である女主人公が犯人に会いに刑務所に出かける。恐る恐るの面会の中から、腑に落ちない何かを感じた彼女は、一つずつ自らの足で調査をはじめる。  

 事件と謎と、そしてそれを丹念に解きほぐしていく主人公。これぞミステリーという感じで、前半はぐいぐいとすすむ。犯人と主人公との面会のシーンもスリリングだ。

 後半は、やや複雑になって判りにくい部分もでてくるが、解決にいたる物語の展開は見事である。女性作家らしい恋愛物語もあるし、ユーモアーやハードボイルド的なものまで盛られており、サービス満点。

 エピローグについては、評価の分かれるところだと思うが、私は好きではない。せっかく一つずつ謎を解明してきた物語があいまいになってしまう。ミステリーの謎解きですかっとしたいのに、いやーな気分になるからだ。

 なお、1995年は、「テロリストのパラソル(藤原伊織)」、「ホワイトアウト(真保裕一)」、「さらば長き眠り(原りょう)」、「パラサイト・イブ(瀬名秀明)」、「龍の契り(服部真澄)」など国内物に秀作がそろっている。

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