2009年4月15日水曜日



 名探偵の掟(東野圭吾著)講談社、講談社文庫

 僕が最近読んだ東野圭吾さんの推理小説は、映画化もされた「容疑者Xの献身」である。これにも登場する探偵ガリレオは、テレビのドラマシリーズでも大人気を博している。

 その、東野さんが20年くらい前に、売れない頃にやけくそで書いた(帯にそう書いてある)のが、この「名探偵の掟」という短編シリーズ物である。実は僕は、この本を1996年に単行本で買って一度読んでいるはずだ。「97年版このミステリーがすごい」で第3位にランクされていたからであろう。

 ところが、そのことも、その内容も全く忘れていた。

 昨日の帰宅途中に立ち寄った本屋で平積みにしてあって、帯の「ドラマ化」というのが目に入っておもしろそうだと思って買ったものだが、家に帰って本棚をみたら、単行本があったのだ。ということで、当然ながらシリーズ2作目も「名探偵の呪縛」も二冊目を買ってしまった。

 4月17日(金)から放送が始まると書いてあるので、その前にどんなだったか読み返してみたが、以前に読んだことが全く思い出せなかった。こんなことは珍しい。だいたい少し読めば、ああ以前に読んだなと思い出すのだが、これは断片でも全く記憶から抜けていた。一つ一つが物語性が少ないからかなとも思うのだけど、それでもそのことがミステリーです。

 で、本の感想はというと、かなりマニアックな本だといえようか。詳細は、文庫本の解説で、村上貴史氏が述べられているのですが、僕なりに言えば次のようです。

 本格推理小説を読むのは楽しいのだが、一通りのパターンを知ってしまうと、このジャンル全体がマンネリ化してしまうような感を覚えることがある。

 この本は、名探偵天下一大五郎と名脇役大河原番三警部の短編シリーズという形をとりながら、本格推理のいろんなパターンをパロディ的に展開してファンを喜ばせる。本格推理物の痛いところも遠慮無く暴き出してみせ、挙句には作者自身をも追いつめてしまう。

 本格物ファンにとっては、大変面白い本だとは言えるだろう。

 作者自身のコメントにもあるけれど、この本をテレビ化することは、ほんとうに可能だろうか。どのようなドラマになるのか楽しみである。

 なお、テレビは、福岡地区ではKBCで23日(木)の25:15から放映されるようです。

0 件のコメント: