2008年5月6日火曜日

大崩山とアケボノツツジ

大崩山(おおくえやま 1644m)
 いつか友人から見せてもらったアケボノツツジの写真がとても美しかった。青い空に薄いピンクの花が見事に映えていた。 連休がそのアケボノツツジに会えるチャンスである。ちょっと遠出になるけど思い切って一人で出かけた。

 高速を大分米良まで飛ばし、三重町から北川町を経て、延岡の手前で祝子川沿いに上る。登山の行程は約10時間だから本日は近くに宿泊するだけ。宿泊は、いつもの「民宿祝子川渓流荘」である。朝8時に出たので午後2時前には着いてしまった。近くを散策して、近くの温泉「美人の湯」につかる。5時に夕食をとったらやることがないので、翌日の朝と昼の弁当を頼んで支払いを済ませ、8時には床に就いた。ビール1本と三食で6000円だから安い。

 翌早朝4時に起床。支度を済ませ、まだ真っ暗の中、車を登山口まで走らせる。登山口の近くの道路脇には、幕営をしている登山者が何組もいた。それも安上がりでいい方法だ。次回はそうしよう。   

 登山口周辺には駐車場がないので、道路の両脇に駐車することとなる。早朝暗いうちから、もうずらりと車が停まっていて登山口近くには停めるスペースがない。今のうちにUターンをして停めておかないと、帰るときにはUターンができなくなる恐れがある。300m程手前の方まで戻り、やっと駐車する。  

 ヘッドランプをつけ真っ暗の中を登山開始。いきなりの急登であるが、長くは続かない。すぐに山腹を緩やかに登る道となる。もう三度目の道だし、明るい昼間ならなんという登山道ではないはずだが、真っ暗な道で、ヘッドランプだけでは様子がよくわからないから不安である。何度か道を間違えそうになる。

 登山口から25分程で大崩山荘(無人)の前に着く。近くにはたくさんのテントが張ってある。幕営にはいい季節だ。左に行けば渡渉して坊主尾根へ。目指す湧塚尾根コースは、直進して三里河原方面に進む。

 さらに20分程で、三里河原と湧塚尾根への分岐に至る。空もようやく明るくなってきて、道も判りやすくなってきた。分岐からすぐに大小の岩がゴロゴロした河原に出て、丸木橋を渡る。丸木橋と書いたが、確かに数年前までは丸木橋だったが、今は鉄の網橋に変わっていた。丸木橋は不安定で、横に掴むロープが張ってあったが、それでもとても怖かった覚えがある。が、今回は楽チンだった。

 渡渉してからの道が案内表示もなく判りにくい。明るくなっていたから、よく観察できて間違わずにすんだが、真っ暗だったらそうとう苦労しただろう。

 大きな岩の間をすり抜けたり、涸れ沢を登り、はしごをよじ登ったり、はたまた一枚岩をロープで登ったりで高度を稼ぐ。ようやく安定した登りとなると、もうアケボノツツジが出迎えてくれた。嬉しいなあ。きれいだな。  渡渉地点から1時間ほどで、袖ダキへの分岐に出る。山頂へは、この袖ダキは通らなくてもいけるのだが、ここからの眺めは大崩での最大の見もので、必ず行くべきである。長いロープにぶら下がり、全身を使って登りつくと、そこはまさに別天地。眼前の光景に誰もが感嘆の声を上げるだろう。正面には圧倒的な迫力の小積ダキの岩峰が、右手にはまるで絵画のように美しい岩肌の下湧塚の岩峰がそそり立つ。私は、大崩山にはこれを見るために登ると言ってもいい。ここを見るのは3回目だが(登頂は4回目)、何度見てもため息が出るほど美しい風景だ。
 去りがたい気分だが、まだまだ先がある。下湧塚への登りは、登ってきたほうから右手のほうに道が伸びていたような記憶があったので探したが、よくわからなかったので、一旦先ほどの分岐まで下った。

 山頂の方へ進むにしたがってアケボノツツジがたくさん咲いているようになる。今回は、アケボノツツジを見るのも大きな目的であったから満足である。アケボノツツジは、ミツバツツジよりも数倍大きな花で、その群落は見事である。腕がまずいのか、写真がなかなか上手く撮れないのが残念である。  袖ダキとの分岐から25分程で、下和久塚分岐に出る。「和久塚」は前に出てきた表示では「湧塚」で漢字が統一されていないが、正しいのはどちらだろうか(昭文社の地図には「湧塚」とあるが)。梯子を数脚登ると下和久塚の上に出る。細長い頂である。ここから中和久までは道が続いているのがすぐ判る。痩せ尾根を進んで下り、登り返すと中和久の岩上に出る。丸い大岩が重なり合った頂で、その岩の上にはさすがに怖くて立てなかった。上和久には、登ってきた道のすぐ先を下って、一旦基部に出て、右手をぐるっと巻いて登る。アケボノツツジが一番多くてきれいなところだ。
 中和久から30分ほどで、上和久の肩に着く。上和久の肩は狭い広場(?)になっており、一番難しいと言われている上和久に登る前に一息入れるところだ。上和久へは、以前は岩をよじ登らなくてはならず、岩角を掴むところがとても難しかったが、今回は別場所の岩の割れ目にロープが垂らしてありこれをよじ登る。ロープの上部は、岩が蓋をしており、わずかな空間を両手両足を使いながら上手く潜り抜ける必要があるが、足場がないので下手をすれば落下してしまう。なかなか難しいところだ。右手に巻き道もあるが、これも最上部は、ちょっと腕力が必要であろう。まあ、慎重に登れば誰にでも登れるとは思うけれど、危険箇所であることは間違いない。

 上和久の頂は、これも細長い。頂からは、登ってきた中和久の見事な岩峰や、ここからしか全容が見られないという、汽船の煙突のような「七日廻り岩」や空中テーブルのような「りんどうの丘」を見ることができる。「りんどうの丘」で休憩する登山者と声を掛け合うのも楽しい。

 上和久を降りると、いよいよ大崩山の山頂を目指す。アケボノツツジも少なくなって、代わりにスズタケの中の道となる。淡々と登ること40分ほどで左頭上にバットマンみたいな岩が見えるとすぐに石塚と言われる展望の良い場所に出る。ここから5分ほどスズタケのトンネルを抜けていくと大崩山の山頂である。狭い山頂からは、ほとんど展望もない。写真を撮り、石塚まで引き返して、ようやく朝食とする(9:06)。

 下山は、登ってきた道を引き返し、宇土内への分岐、モチダ谷分岐、坊主尾根分岐をやり過ごし、少し下って右に「りんどうの丘」経由坊主尾根への道を進む。この道に入るとまたアケボノツツジが多く咲いていて気分がいい。「りんどうの丘」はテーブル状の岩が突き出た広場で、近くに水場もあり幕営ができる。対面には湧塚の岩峰群が見事である。

 りんどうの丘から少し下り登り返せば小積ダキの上部に出る。ここからの眺めも素晴らしい。特にこれからトラバースする奇岩「象岩」は見ものである。切れ落ちた岩の中間部分にわずかに通れる岩棚を登山者が恐る恐る通る姿が豆粒のように認められる。
 この象岩のトラバースは、本コース最大の難所と言ってもいいだろう。狭い岩棚の横にワイヤーがきっちりと張ってあり、これを掴んで慎重に通れば、特に危険はないが、下はスパッと切れ落ちており、まあ落ちればどこまで落ちるか判らないし確実に命を落とすであろう。

 ここを通過すると、あとは垂直に架かる梯子の連続の急降下となる。いくつの梯子が架かっているのか数えなかったが、もううんざりするほどの梯子である。次から次へとまったく気が抜けない。梯子は登るより下るほうが気を使う。途中の坊主岩の奇岩をゆっくりみる余裕もないくらいだ。

 梯子が終わっても急降下はしばらく続く。朝から朝食以外にろくに休憩を取らなかったせいか、膝の裏の腱が痛くなってきた。下るスピードが落ちる。

 下り始めて1時間半くらいたったころようやく緩やかな下りになると、渓流の音が耳に入り始め、渡渉地点が近くなる。

 渡渉地点は、石が積み上げられてるが、判りにくい。飛び石に渡り終えると、大崩山荘の前に出る。山荘からは、20分ほどで登山口に着く。

 8時間の岩峰歩きは、さすがにくたびれた。美人の湯で汗を流し、帰路に着く。憧れのアケボノツツジの群落にも出会え、満足のいく山行であった。

(4:40)登山開始、 (5:05)大崩山荘、  (5:34)渡渉地点丸木橋、 (6:34)袖ダキ頂上、 

(7:18)下和久塚頂上、 (7:31)中和久頂上、  (8:07)上和久頂上、 (9:01)大崩山山頂、 

(9:06)石塚、朝食、 (9:33)下山開始、 (10:04)りんどうの丘、 (10:30)小積ダキ頂上、

(12:07)渡渉地点、 (12:12)大崩山荘、 (12:35)登山口

0 件のコメント: