2009年6月22日月曜日

剣岳 点の記


 「点の記」とは、地図を作るための三角点を定める際の公式記録書のこと。

 剣岳は、今では、僕らみたいな素人登山者でも簡単に頂上を踏むことができるようになった(僕は2006年8月12日に登頂)が、明治の登山の草創期には、登ることが困難とされていたらしい。

 新田次郎の小説「点の記」は、主人公の測量官が、登頂に成功するまでの苦労を記した実話に基づいたフィクションである。史上初登頂が軍の命令であったが、登頂して見ると、既にずっと昔に誰かが登頂した形跡があった。

 登頂するまでは、かなりの緊迫感が伝わるが、後半は少し描写が細にわたり退屈する。まあ、貴重な記録文学ではあるだろうけど。

 2年前に映画化されると聞いて、それからずっと楽しみにしていた。

 映画は、大きなスクリーンいっぱいに、山の厳しさ美しさがよく表わされており撮影には相当の苦労があったものと思われる。

 また、現在は、登山ルートのいたるところに指導標や梯子や鎖や山小屋などが作られているため、それらを避けての登山シーンの撮影は余計な苦労があったのではないかと思われる。そのためか、登山シーンにいまひとつ迫力が足りない気がした。

 特に、山頂を踏むシーンがあまりにもあっけないという感じを受けた。

 しかし、コンピューターグラフィック全盛の映画に、このような実写の意欲的な作品が作られて相当の感動を与えることができたことは評価したい。このような日本映画がまた作られるよう期待したい。

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